『かいごcope』を運営している、介護福祉士の〈michi〉です。
”cope”とは「問題に対処し切り抜ける」という意味。
介護の現場経験トータル約26年、現在も現役介護中!
整体と心理カウンセラーの資格も保有。
毎日私たちが行っているケアの大部分は「介助」です。
「介護」は仕事としての分類
「介助」は起居動作の手伝い、具体的な手段のことです。
介助は主に6種類あり、様々な方法があります。
今回の内容はこちら
- 介護の分類と介助者がおさえたいポイント
- 6種類の介助について
介護の3原則
「介護の3原則」とは、基本理念ともいえるもので介護者が介助する上で意識しておきたいものです。
介護の定義:心身の障害が原因で自分だけでは日常生活動作が困難な人に、お世話や支援を行うこと
目的:「自立をはかる」
介護が必要な人は、同じ病名や同じ介護度であっても「介助してほしいこと」「してほしくないこと」はそれぞれ違います。
「これができるようになりたい!」と思うこともそれぞれです。
なぜならば、病気の程度、性格、それまで育ってきた環境などが異なるからです。
「介護3原則」を意識しながら介助者がおさえたい4つのポイントです。
介護の3原則と4つのポイント
- 相談窓口との繋がり
- 介護保険制度の活用
- 介護施設への入所を検討
- 介護予防のススメ
- 困った時は地域包括支援センターや市役所、区役所などの相談窓口を利用しましょう。地域全体で支援できるので心強い。在宅介護をしている人の体験談や成功例がヒントになったり、「辛いのは一人だけじゃないんだ」という安心感も得られます。
- 介護は長期間に及ぶため、金銭面の負担が軽くなる「介護保険制度」はとても重要。「要介護状態」「要支援状態」と認定されれば、必要な介護サービスが介護保険で受けられます。介護サービスの種類は、訪問やデイ、リハビリ、ショートステイや福祉用具などたくさんあります。
- 介護が長期間、かつ要介護度が高ければ介護者・介助者の負担も重くなります。介護、特に在宅介護においては、介助者に過度の負担がかかり心身ともに疲弊してしまうのは避けたいものです。そうなる前に、地域の支援事業や老人ホーム、介護施設への入所を選択する場面も出てくるでしょう。いきなり入所で利用者さん本人が混乱しないようショートステイなどから試していくケースが多いです。
- 「要支援」や「要介護度」がまだ低ければ、是非「介護予防」に意識を向けましょう。具体的には体操やリハビリなど運動能力の低下防止、食生活の見直し、口腔機能の向上を図る、などです。介護度が抑えられれば自分でできることも増え、介助者とともに自立に向けた喜びが得られます。
4つのポイントはケアマネの仕事にもあります。
ケアマネを目指している人は、アセスメントとあわせて多職種の人から情報収集の仕方を教えてもらうのもいいでしょう。
介護の定義
介護は仕事として分類され、大きく分けると
「身体介護」と
「生活援助(家事援助)」になります。
他に「精神的援助」、
介護保険を活用した「社会的援助」などもあります。
その人が必要とするサポートや必要なサービスを見極め、自立に向けた援助を行うこと。
病気などで改善が見込めないとしても「現状維持」を保とうとすること。
これが本当の意味での「介護の定義」と言えると思います。
「介護」に分類される援助
身体介護 | 起居動作など生活動作の支援。自立支援を目的として行うので、本人の自力を活かし介助しすぎないこと。 |
生活援助 | 掃除や洗濯など日常生活の支援。ポイントは利用者さんの身体に触れるか触れないか。 家族への支援や日常生活以外の支援はNG(家族の食事を作る、普段しない大掃除や荷物の片付け、など) |
精神的援助 | 精神面のサポート。病気や疾病による不安から精神的に悩んだり落ち込んだりしたときなど、専門職に相談、ケア。 |
社会的援助 | 介護保険を活用し、適切な介護サービスを利用。 |
※身体介護で行う支援が「介助」となるので、
例:「食事介護」「入浴介護」→NG 正しくは「食事介助」「入浴介助」
※生活援助は本人への支援なので、「家族の分の食事も作って」など要望があっても「(介護保険で)それはできないので、本人様の分だけお作りします」などのようにお断りを。
介助の手段は6種類
身体介護の中で「介助」とは〈起居動作の手伝い〉
具体的な手段のことです。
6種類あります。
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 歩行介助
- 更衣介助
- 移乗・移動介助
食事介助とは
食事がうまく摂取できない方への食事の支援です。
食事介助はときに誤嚥や窒息といった事故に繋がるリスクがあるので、慣れで行わないようベテランこそ注意が必要です。
・何が原因で介助が必要なのか?→咀嚼・嚥下機能の低下、認知症、麻痺、など。
・姿勢は正しいか?
・利用者さんの食べるペースで口に入れているか?
・適切な水分量が摂取できているか?
・口腔内のケアはできているか?
・口腔、嚥下体操は必要か?
排泄介助とは
排泄介助は具体的に分けると4つになります。
介助の種類 | 介助方法 |
---|---|
トイレ誘導 | トイレまで誘導し、ズボンの上げ下ろしなど排泄前後まで介助を行う |
ポータブルトイレ誘導 | 居室のベッド横に設置するポータブルトイレへの誘導と排泄介助 |
オムツ交換 | 寝たきりや座位保持が困難な方に行うオムツ介助 |
尿器・便器介助 | ベッド上で尿器や便器を使用して排泄を行う方への介助 |
介助を受ける利用者さんは「申し訳ない」「恥ずかしい」といった感情を持つ介助です。
プライバシーや尊厳を守ることに十分な配慮が必要です
また、トイレやポータブルなどで排泄を行う際、予期せぬ行動で前かがみ(腰から上部が前に倒れる動作)になり前方に転倒する可能性もあります。
・「落ちているものはないか」
・「パーキンソン病などで前傾姿勢になりやすい症状はないか」
など危険予知の習慣をつけたり周囲の環境の確認や声掛けなども心掛けるといいでしょう。
入浴介助とは
「清潔保持」と「リラックス効果」が主な目的です。
在宅介護の場合は、「入浴後はぐっすり眠れる」と話す方も多く介助を楽しみにされている方も多いです。
半面、入浴を嫌がる方もいてスムーズにいくか時間がかかるかと分かれる介助でもあります。
また、利用者さんは体力を消耗する行為でもあるので注意が必要
・体温測定、血圧測定は大丈夫か?
・排便の”いきみ”で血圧上昇、排便後の血圧低下、ふらつきも注意。
・排便コントロールを行っている場合は状態の確認をして入浴介助を。
・在宅でも施設でも浴室は事故のリスクが高い。転倒には十分な注意が必要。
・入浴後の水分補給を忘れずに。
・シャワーや浴槽の温度は適切か?
・湯冷めしないように、など細やかな配慮も必要。
排泄介助と同様に、プライバシーや羞恥心、怪我のリスクに十分な配慮が必要です。
歩行介助とは
「見守り」「付き添い」「手引き」「杖歩行」「歩行器介助」「階段歩行」「(麻痺の)患側歩行」などいくつか種類があります。
歩行の種類 | 介助の特徴 |
---|---|
見守り歩行 | 介助自体は必要ないが、 ・スムーズに歩けているか、 ・周辺に危険因子はないか、 ・どこへ行こうとしているのか、 など観察と予測が必要。 |
付き添い歩行 | ・横に付き本人のペースに合わせて一緒に歩く。 ・軽く手を添えるときもあり。速度や足取りがいつもと変わらないか観察を。 |
手引き歩行 | ・本人と向き合う形で正面に立ち、両手をとって介助する。 ・介助者は利用者さんの肘に下から手を当て支える、利用者さんは介助者の腕をつかむようにすると安定する。 |
杖歩行 | ・介助者は杖を持つ手の反対側、やや後ろに立ち、付き添う。 ・ふらついたらすぐに支えられるよう意識する。 |
歩行器歩行 | 歩行器の種類によって介助を変える。 ・持ち上げるタイプ・・・持ち上げた際は後ろに転倒しないよう、つまづく・ひっかかったときは前方に転倒しないように注意。 ・前腕支持型歩行車・・・利用者さんの後ろに立ち、脇の下もしくは歩行器を支える。スピードのコントロールを行う。 ・グリップを握って歩く歩行車・・・グリップのブレーキでスピード調節。介助者は歩行器と本人の両方に手を添えコントロール。 ※車輪のついた歩行器は、加速がつきすぎないように注意。 |
階段歩行 | 上る時と下りる時で介助方法が変わります。片麻痺など、健側、患側がある場合。 〈上る時〉 ・介助者は斜め後ろに立つ。 ・麻痺がある方に立ち、腰と脇を支える。 ・健側(いい方の足)から先に1段上る。 ・介助者は腰と脇を支えながら患側(不自由な方の足)を、先に上った健側と同じ段にのせる。1段ずつゆっくり上る。 ※ポイント:患側を上げる時は、重心(体重)を健側(いい方の足)にのせるように意識する。→健側に体重がのることで麻痺側の足が上がる。 〈下りる時〉 ・介助者は斜め前に立つ。 ・麻痺がある方の腰と脇を支える。 ・患側(不自由な方の足)から先に1段下りる。 ・介助者は麻痺側を支え、健側(いい方の足)を同じ段にのせゆっくり下りる。 ※ポイント:踏み外さないよう足の裏全体をきちんと段差にのせる。 :麻痺側の足が内側に入らないように。半回転が加わったように体の向きが変わり転落の危険性がある。介助者はそうなる前に麻痺側の肩を抑え修正する。 ※下りる時の方をより慎重に。踏み外して転落、という事故が起こらないように。 ※上る時と下りる時で先に出す足が違う点に注意! |
患側歩行 | 半身麻痺など患側の歩行介助。杖など使用する。 ・介助者は麻痺側の半歩後ろに立つ。 ・杖→患側→健側、の順で進む。 ・杖は健側より20㎝程度斜め前につく。 ※患側を前に出す時は先についた杖(健側)に重心をおく。健側に少し体が傾くイメージ。 ※患側の膝はまっすぐのままなので、前に出す時は外側に少しふくらんでつく形になる。 ※介助者は麻痺側に近寄りすぎない。 麻痺側を大きく動かして前に出すので、介助者が邪魔になると転倒する。 ※使用する杖の先端がゴムの場合:歩行の前にすり減っていないか確認。 |
更衣介助とは
更衣交換は入浴のとき、着衣が汚れたときに行いますが、日中に過ごす服として着替える際はできるだけ本人に選んでもらうことも大切です。
更衣の際は声掛けをしながら協力動作を促しましょう。(「手を曲げて」「足を上げて」「前を向いて腰を伸ばして」、など)
最も大切なポイントは
「着患脱健(ちゃっかん・だっけん)」
着るときは「麻痺側」から、脱ぐときは「健側」から。
着脱がしやすいだけでなく、麻痺側の骨折・脱臼や皮膚はくりなどのリスクを抑えられます。
その他のポイント:
・前開きなど着脱しやすい服を選ぶ。
肌を露出するので、
・室内温度は適切か?
・プライバシーへの配慮
・皮膚状態も観察する。
・手順(今からすること)など声掛けをしてから行う。
手順: 脱ぐ→着る
- 健側の腕から脱ぐ: 肩と肘が外れれば簡単に脱げる。患側も同じ。
- かぶりの服なら頭を脱ぐ: 顔に引っかからないように気をつけながら。
- 患側の袖を外す: 麻痺や拘縮に合わせて力加減を変える(利用者さんが力を入れているなら介助者は力を抜く)。肩と肘が抜ければ楽に脱がせることができる。無理にすると皮膚はくりや脱臼などに繋がる。
- 患側の腕から着せる: あらかじめ袖をたくし上げておき患側を通すと早い。脇、肩まで上げる。
- かぶりの服なら頭を通す: 首に負担がかからないように気をつけて。
- 健側の腕を通す: 袖を確認できたら自分で腕を通してもらいましょう。
ズボンも着るときは麻痺側から、脱ぐときは健側からの「着患脱健(ちゃっかん・だっけん)」は同じ。
更衣介助は椅子に座るなど安定した場所で行い、自分でできる部分は行ってもらうなど協力動作を促しましょう。
移乗・移動介助とは
移乗は「別の対象へ移ること」
移動は「別の場所へ動くこと」
移動は車椅子などに乗って動くので、介助方法も移動手段の操作となります。
移乗介助は実際に利用者さんに触れ場所を移ってもらうので、いくつかの注意点が必要となります。
具体的には「転倒・転落」「皮膚はくり」などです。
「移乗・移動介助」の3つのポイント
今回抑えるポイントは3つ。
- 身体の姿勢や動き(動作)の基本を理解する
- 大きな骨を支える
- 「ボディメカニクス」の活用
身体の姿勢や動き(動作)の基本を理解する
人間の身体がどのような動きをするか、ひとつの動作で使う関節や体の部位はどこか、などを理解していれば介助する側もされる側も少ない介助量で負担なく行えます。
例えば、
立ち上がる動作を見ても人間はまっすぐ上に立つことはできません。
上半身を前に倒し、ゆるいS字カーブを描きながら立ち上がります
・その時の足は、片方少し後ろに引いています。
・そして、深く座っている場合は浅く座りなおすでしょう。
・立ち上がるには、膝の裏と座面の間にあそび(すき間)がないといけないのです。
浅く座り、上半身を前に倒すことでおしりが浮きます。片足をひき、S字を意識しながら体を上に伸ばすことで立ち上がることができるのです
それを理解していれば、介助する時の声掛けも
「浅く座りなおしましょう」
「片方の足を少し後ろにひいて」
「おじぎをするように体を前に倒して」
「S字を描くようにゆっくり上に上がりましょう」、となり介助し過ぎることもないと思います。
大きな骨を支える
移乗・移動介助には体に触れて介助を行う場面もあります。
大きな骨、「肩甲骨・骨盤」などを支えて行うことで少しの力で安定感のある介助ができます
大きな骨を支えるということは、できるだけ体を近くによせて行うことになります。
安定感だけでなく介助者の腰痛予防と
利用者さんの恐怖感の軽減にも繋がります。
「ボディメカニクス」の活用
ボディメカニクスとは、「最小限の力でできる介護技術」のひとつです。
人体力学とも言われ、腰痛予防にも大きな効果が期待できます。
移乗が必要なシーンは「車椅子からイスへ」「ベッドから車椅子へ」 などがありボディメカニクスが役立ちます。
ベッド上での体位交換や起き上がるときなどもボディメカニクスが活用できるでしょう。
「ボディメカニクス」について詳しくはこちら
介護と6種類の介助 まとめ
「介護」とは仕事の分類上使われる言葉で、「介助」は起居動作の手伝い、具体的な手段のことです。
介助には6つの種類があり、経験を積むことで介護のスキルはアップしていきます。
介助を行う目的は
「自立をはかる・促す」ことです。
残存機能を活かしてできることは自分でやる、できない事・ひとりではむずかしいことは手伝ってもらうことで毎日をより楽しく過ごすことができる。
介助には転倒や怪我などリスクを伴うこともありますが、よく観察し経験を積む、スキルを上げることで利用者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上にも繋げられます。
介護は長期に及びます。
在宅で家族を介護している人もできるだけ介助者自身の負担軽減を行いながら、4つのポイントをおさえながら介護に向き合っていけたらと思っています。
介護には福祉用具の活用も助けになります。
介護保険が利用できますので、利用者さんの介護度に応じて情報収集しお互いが少しでも楽になるような介護に繋げましょう。
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