在宅でも施設でも、トイレ介助ってけっこう大変です。
- 回数が増えてきた
- 何度も呼ばれる
- 失敗ばかり
- 転倒がこわいので全介助
残存機能を維持するためにも、できることまで手を出したくない。
介助する側もされる側も、
トイレの動作を分解して考えると、負担が少し軽くなります。
トイレ動作を分解
トイレ介助にかかる排泄動作は、実はいくつかの工程でできています。
- どの工程に時間がかかるのか
- どこでつまずいているのか
それを見極めることで、必要な介助量が見えてきます。
ここでは、とくに在宅介護で観察してほしいポイントを見ていきます。
トイレ(排泄)を認識する
まずはじめに、
「行きたい」と気づけるかどうか。
観察ポイント
- 尿意・便意を言葉やしぐさで伝えられるか
- トイレの場所がわかっているか
- ガマンできる時間はどのくらいか
認知機能が低下してくると、からだは動いても
「行きたい」という判断・理解ができにくくなります。
失禁や失敗が増えてきた場合、
身体機能の低下だけでなく認識の部分でつまずいていないか、観察してみましょう。
トイレまで移動する
次に、
安全にトイレまでたどり着けるか。
観察ポイント
- 歩行のふらつきはないか
- 夜間でも足元が見えているか
- トイレまでの動線は安全か(物がおかれていないか)
在宅では、この生活環境によって事故が起こる原因にもつながります。
特に夜間は、
- 暗い
- 眠気がある
- 急いでいる
という条件が重なり、転倒リスクが高まります。
まずは環境を整える視点も大切です。
方向転換する
ここは、施設でも転倒が多い、要注意ポイントです。
トイレ前で体の向きを変える動作は、想像以上にバランス能力を使います。
観察ポイント
- こきざみ歩行になっていないか
- 足がもつれていないか
- 手すりをうまく使えているか
「歩けるから大丈夫」と思っていても、
方向転換は不安定になりやすいのが特徴。
- 手すりの位置調整
- 立ち位置の誘導
これだけでも安全性が大きく変わります。
ズボン・下着の上げ下げ
見落とされやすい、でも失敗が起きやすい工程。
観察ポイント
- 片手で衣類操作ができるか
- 立位バランスが保てているか
- 焦って動作が速くなっていないか
ズボン操作中は、
- 片手動作になる
- 下を向く
- 早く下ろそうとする
不安定になる要素が重なります。
「ここだけ少し手伝う」といった部分介助が最も効果的。
便座へ座る(着座)
かんたんに思えますが、ヒヤリが多いポイントです。
観察ポイント
- 便座の位置を目で確認できているか
- ドスンと座っていないか
- 便座の高さは合っているか
勢いよく座る「ドスン座り」は、
- 痛み
- 恐怖心
- バランスを崩す原因
にもなります。
必要に応じて、
- 便座の高さ調整
- 手すりの追加
など、環境面の見直しも検討してみましょう。
排泄
ここは比較的安定している方も多い工程です。
観察ポイント
- 座位保持ができるか
- いきみが強すぎないか
- 不安や落ち着かなさはないか
排泄中に
- 前かがみになりすぎる
- 体が傾いたりする
こうなると転倒リスクがでてきます。
姿勢保持のサポートが必要。
いきみが強すぎることも、
- 肛門周囲のトラブル
- 急激な血圧上昇
体に多くのリスクが生じてしまいます。
また、焦りや不安が強いと失敗につながることもあります。
安心できる声かけも、大切な支援の一つです。
後始末(拭く)
意外かもしれませんが、在宅介護で悩みが多い工程の一つです。
観察ポイント
- 手が後ろまで回るか
- きれいに拭けているか
- 疲労やあきらめた様子はないか
うでや肩の可動域、体幹の柔軟性が低下すると、
この動作が急にできなくなる方も、少なくありません。
全部介助をしてあげる前に、
- できる範囲の見守り
- 一部介助
少しずつ手をかしてあげましょう。
立ち上がり
ここも転倒が起きやすい重要ポイントです。
観察ポイント
- 前傾姿勢が取れているか
- 手すりを使えているか
- 立ち上がり後にふらつかないか
立ち上がりは、
- 下肢筋力
- バランス
両方が必要になります。
特に注意したいのは、立った直後。
直後の一歩目がふらつく場合は、
「立てた=安全」ではない
という点に気をつけましょう。
手洗い・退出
最後まで、油断は禁物。
観察ポイント
- 蛇口操作ができるか
- 歩行が不安定になっていないか
- ホッとして気がゆるんでいないか
最後まで安全に終えられているかも大切な視点です。
排泄が終わると、本人も介助者もホッとします。
退出時の転倒も少なくないので、
最後まで見守る意識が安全につながります。
まとめ
ここまで、トイレ動作を9つに分けてみてきました。
普段は、
「トイレに行く」
というひとつの行動に思えますが、実は、いくつもの動きが重なって成り立っています。
介護をしていると、つい
「トイレができる・できない」
という大きな見方をしてしまいがちです。
実際には、
できなくなったのは全部ではなく、その中の一部だけ
といいうこともあるのです。
たとえば、
- 歩けるけど、ズボンの上げ下げが難しい
- 便座には座れるけど、立ち上がりが不安定
- トイレの場所が分からなくなっている
そんな風に、
どこでつまずいているのか、が見えてくると、
必要な介助も変わってきます。
全部を手伝うのではなく、
できない部分だけを支える。
それだけでも、転倒リスクを減らしながら
本人の「できる力」を残すことにつながります。
トイレ介助は、在宅介護の中でも特に大変な場面のひとつです。
毎日のことだから、介助者の負担も少なくないのです。
「全部してあげなくては」と思いつめないで、
少しだけ視点を変えてみる。
日々の介護を少しでも楽にできれば、お互いに笑顔が生まれます。


