「認知症には絶対なりたくない!」
・・・という方はとてもたくさんいます。
私は絶対ならない、と断言できる人は少ないと思いますが、
認知症は「特別な薬や治療法よりも、毎日の生活習慣の積み重ねで予防効果が高まる」
ということがわかっています。
むずかしいことをするのではなく、
「脳・体・心」を少しずつ動かす習慣をつければ認知症になるリスクは減少するといえます。
この記事では、
- 認知症予防に効果的な毎日の習慣
- 無理なく続けられる1週間の生活スケジュール例
をわかりやすくご紹介します。
ご家族の介護やご自身の健康管理にもぜひお役立てください。
認知症予防の6つの柱:毎日の習慣
認知症予防には、
「頭を使う」「体を動かす」「楽しくすごす」
という3つのことを意識したいものです。
その3つを中心として、生活に取りいれられる習慣をみていくと6つに分類できます。
「脳・体・心」を少しずつ動かす習慣として、心がけたい6つの柱。
① 脳を使う習慣
- 考える
- 話す
- 新しいことを覚える
これらは脳の神経ネットワークが刺激され、認知症の予防につながります。
本や新聞を読む
できれば声に出して音読すると、なお効果が期待できます。
日記をつける
書くのが夜ならその日一日を思い出しながら、日中に書くなら昨日のことを(思い出しながら)。
脳トレをする
クロスワードや漢字穴うめ、計算やナンプレなど。
これは雑誌もありますし、スマートフォンのアプリでも楽しめます。
スマートフォンが使いこなせていない、という方はスマホの練習もGood!
新しい趣味に挑戦
料理・手芸・写真などがおすすめです。
また、地域によっては麻雀や囲碁・将棋などの講座が開かれていることもあり、
趣味を通して新たな交友関係が築けることもプラスになります。
② 体を動かす習慣
肩やひざなど、体に痛みがある方は無理をしない範囲で。
体操などの軽い運動でもかまいません。
有酸素運動は脳への血流を増やし、記憶力を高める効果があります。
20〜30分のウォーキング(散歩)
暑い時間や暗い時間をさけ、天気がいい日はできるだけ外に出ましょう。
ストレッチやラジオ体操
痛みのでない範囲で、呼吸を意識しながら。
椅子を使った簡単な筋トレ
座ったままできる運動やストレッチもあります。慣れてくれば、やわらかいボールを太ももではさむ、などの運動を取りいれてもいいでしょう。
③ 食事の習慣
バランスのとれた食事を意識することも大切です。
生活習慣病の予防にもなり、それは認知症の予防にもつながります。
地中海式+和食スタイル
魚・野菜・豆・オリーブ油・発酵食品を中心とした理想的な食事。
DHA・EPAといった不飽和脂肪酸、ビタミン・ミネラル、オリーブや亜麻仁など良質の油、大豆を多く取りいれた和食は健康維持に役立ちます。
塩分・糖分は控えめ
塩分を過剰に摂取してしまうと、高血圧になるリスクが増加します。
塩分の取りすぎ、高血圧は血管や内臓に負担をかけ、さまざまな病気を引き起こします。
糖分の取りすぎも、体重増加や糖尿病のリスクを高めると言われています。
ただ、摂取に対して過剰にならず「取りすぎない」ことを意識すればいいでしょう。
持病や遺伝が心配な方は、かかりつけ医に相談を。
水分をこまめに(1.5L/日が目安)
目安とされている量も、水やお茶だけで摂るのは健康な人でも困難です。
目安量は、食事でとれる水分も含まれているので、汁物や野菜を多めに摂る、食事の前後・食間にお茶を飲む、などの対策も有効です。
④ 睡眠の習慣
高齢になると、いくつかの要因から睡眠時間が短くなります。
高齢者であっても理想的な睡眠時間は7~8時間と言われており、また睡眠中に脳の老廃物が排出されるため質の良い眠りが必要です。
就寝の1時間前にはスマホ・テレビをやめる
ブルーライトの影響で脳が興奮状態になり、なかなか寝つけなくなります。
眠りも浅くなり、熟睡できないという報告もあるため、寝る1時間前にはリラックスできる時間を作りましょう。
お風呂で体を温めてから寝る
寝る前の1時間半~2時間前に入浴をすませると、温まった体温がちょうど良いくらいに下がり、深い眠りにつながります。
ぬるめのお湯にゆっくりつかるのも、リラックスするでしょう。
毎日同じ時間に寝起きする
規則正しい生活を心がけましょう。
朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜の良質な睡眠につながります。
日中は体を動かし昼寝をしすぎない、ということも規則正しい生活のひとつです。
⑤ 心の健康を保つ習慣
高齢者にとってのストレスや孤独は認知症リスクを高め、社会問題にもなっています。
厚生労働省の調査でも高齢者のうつ病の発症は上昇傾向という結果が出ており、後期高齢者になるとさらに多くの人がうつ病の診断を受けているといいます。対策は急務です。
家族や友人と話す
社会とのつながりを持つ、ということが大きな役割を果たします。
孤独感の軽減と会話による楽しい時間の共有が、心を穏やかにします。
感謝日記をつける
日記、というほどのものでなくメモでもかまいませんが、大切なのは「感謝」することです。
日常の中で感じた小さな喜びを「感謝」して残す、それは小さな喜びを見つけだせる習慣がつく、ということにもつながります。
笑顔を意識する・趣味を持つ
趣味を持つことは心と体の健康にとても重要です。
趣味に没頭する、楽しむことで脳内にセロトニン(幸せホルモン)などの物質が分泌されます。また、体を動かす趣味であれば、運動することで適度な疲れが夜間の睡眠を良質なものにします。
趣味により他者と交流ができる、という点も大きな役割を果たすことでしょう。
⑥ 健康管理の習慣
日々の生活そのものを見直すことは大切です。
特に、生活習慣病の管理は認知症予防にもつながり、健康寿命を延ばす対策としても有効。
血圧・血糖・コレステロールのチェック
高血圧の方や持病がある方は、これらのチェックが欠かせません。あわせて、バランスのいい食事や適度な運動など、健康的な生活を送る対策も重要です。
定期健診と歯科検診
最低でも年に一度の定期健診は受けましょう。また、普段の自分を把握しておくことで「いつもと何だかちがう」と感じやすくなります。不調を感じたら、できるだけ早く病院受診をしましょう。
また、口腔ケアは身体機能の維持や認知症と深く関わることも分かっていますので、定期的な歯科検診も行いましょう。
禁煙・節酒を意識
喫煙や飲酒は、「がん」「高血圧」「肺・呼吸器の病気」「認知症」などの病気のリスクを高めてしまいます。
長年の習慣で禁煙・節酒がむずかしい場合は、専門外来などを受診し相談してみるのがいいですね。
たばこの本数を減らす、一日の適正飲酒量を守る、といったことの実施が健康寿命の延伸につながります。
認知症予防の1週間スケジュール
一日を通して行うといい共通の習慣と、毎日に変化をつけるため曜日ごとに内容を変えて作った1週間のスケジュールをご紹介します。
ご自身の生活スタイルにあわせて、参考にしながら作りなおしてかまいません。
朝の習慣(毎日共通)

6:30〜7:00: 朝日を浴びて深呼吸
朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、体がしっかり目覚めます。(浴びる時間は10~30分程度でOK)
リセットされて13~14時間後に眠気がくるサイクルがあるので、夜間の自然な眠りに効果的。
7:00〜7:30: 軽い体操・ストレッチ
軽く体を動かすことで血流促進の効果が期待できます。
高齢者にとっては、身体機能の維持や転倒防止の役割にもなります。
朝食をきちんと摂ることも体内時計のリセットになり、 できれば和食で栄養バランスを整え、脳を活性化する習慣もおすすめ。
昼の習慣

| 曜日 | 内容 | 効果 |
| 月 | 20分程度のウォーキング(散歩) | 脳への刺激・血流を高める |
| 火 | 新聞や本の音読 | 言語中枢を刺激 |
| 水 | 料理 | 指先と段取り力の向上 |
| 木 | 友人と電話や外出 | 社会・他者交流 |
| 金 | 脳トレ(塗り絵・将棋など) | 前頭葉の活性化 |
| 土 | 買い物 | 運動+判断力の向上 |
| 日 | 家族と会話・写真整理 | 感情の共有・思い出の想起 |
体に負担のかからない程度の内容にするのをおすすめします。
あくまでも一例なので、身体機能の状態や移動手段の有無、お天気によって変更する、などそれぞれの生活スタイルで考えてみるといいでしょう。
散歩などは午前中の方がいい場合もありますが、それ以外は昼食やおやつの時間をみながら取りいれるといいでしょう。
パズルや塗り絵など脳トレになるグッズもいくつかそろえておくといいですよ。
夜の習慣(毎日共通)

| 時間 | 内容 | 効果 |
| 18:00 | 早めの夕食 | 消化・睡眠リズムを整える |
| 19:00〜 | テレビ・音楽でリラックス | ストレス軽減 |
| 20:30〜 | 日記・感謝ノート・入浴 | 前向きな気持ちを維持 |
| 21:00〜22:00 | ~就寝 | 深い睡眠で脳の回復 |
毎日の習慣の6つの柱にもあった食事と睡眠の習慣は、夜の時間の過ごし方が大きく関わってきます。
栄養のバランスを考えながら、できるだけ消化のいいものを選んだりゆっくり食べたり。(高齢者の食事の工夫や1週間の献立の記事を現在執筆中です。でき次第アップしますのでお楽しみに!)
就寝する時間から逆算して1時間半前くらいには入浴し、スマホやテレビを消す、という習慣をつければ睡眠の質も良くなるでしょう。
夜はできるだけ大きな音を消し、リラックスできる音楽をかけて静かに過ごす時間を持つのが心の健康につながります。
日中体を動かしていると、適度に疲れて夜はぐっすり眠れるでしょう。
続けるコツ
ここまで、1週間のスケジュールとしてご紹介しましたが、「完璧」を目指さないことが大切です。
ときどき忘れたり寝坊したりしても大丈夫です!できる日だけでもOK、なんにもしない日をつくってもOK、できなかったことをする予備日に空けておいてもOK!
そう思うと肩の力が抜けませんか?
続けるコツは、「楽しんでやること」です!
- 計画通りにできた日は、カレンダーにシールを貼ったりチェックをいれる
1週間、1か月、トータルで評価しましょう。ひと月休まずできて、オールコンプリートできたら、翌月一日のおやつは奮発しておいしいのを食べる、とか。
家族に協力してもらって、一緒に実践すると継続しやすいですよ。
まとめ
認知症予防の基本は、「頭を使う」「体を動かす」「楽しくすごす」。
「脳・体・心」を少しずつ動かす習慣をつけることが大切です。
朝、昼、夜の習慣に分けて、無理せず行う。
行動が習慣になる、ということが重要なのです。
毎日の小さな習慣が、将来の大きな安心につながる。
ご家族と一緒に、今日から無理のない範囲で始めてみましょう。
「脳・体・心」、どれが一番、ということはありません。
脳にも体にも心にも、ストレスがかかるのが一番大敵です。無理をしてストレスをかけるのではなく、楽しく、リラックスして、小さな習慣をつみあげていきましょう。


